フランスの新法案は、警察が特定の犯罪者の携帯電話のカメラ、マイク、GPSを遠隔操作で作動させ、監視することが認められるというものだ。
広範な司法改革法案の一環である“スパイ規定”は、テロ容疑者だけでなく、犯罪嫌疑者や組織犯罪を犯す可能性のある人々の監視が可能となる一方で、市民のプライバシーに対する懸念の声が上がっている。
フランス議会が個人のスマホを覗き見できる法案を可決 7月5日、フランス議会の議員たちは、同国の警察はスマホやその他のデバイスのカメラ、マイク、GPSを遠隔操作し、犯罪容疑者をスパイ(監視)できるようにすべきであるという法案に同意した。
ただしこの措置はには裁判官による事前の承認が必要となる。また使用を重大犯罪に限定し、最長6ヶ月間に限定するとしている。
位置情報(GPS)の利用は、少なくとも懲役5年の犯罪に限定される。
この法案の可決により、当局はGPSを使用して、携帯電話やラップトップ、車、接続されたデバイスを介して、これらの犯罪者を追跡することが可能となる。
また機器を遠隔操作することで、テロ犯罪や組織犯罪の疑いのある者たちの音声や画像を記録することができる。
ただし、フランス紙ルモンドによると、弁護士、ジャーナリスト、判事、政治家、その他の「デリケートな職業」への起用は禁止されているという。
5日の討論会で、エマニュエル・マクロン大統領陣営の議員らが、遠隔スパイの使用を「犯罪の性質と重大さによって正当化される場合」かつ「厳密に比例した期間」に限定する修正案を提出した。
民間団体からの懸念の声 一方で市民自由擁護団体は警戒感を露わにしている。French Assembly passes bill allowing police to remotely activate phone cameras and microphones for surveillance https://t.co/mFa4inX9VA pic.twitter.com/pfV93PwHz1
— philip lewis (@Phil_Lewis_) July 6, 2023
デジタル権利団体「La Quadrature du Net(ラ・カドラチュール・デュ・ネット)は、この規定が乱用される可能性を指摘している。
法案では何が重大犯罪なのかが明確にされておらず、フランス政府が環境活動家や他の重大な脅威ではない人々を狙うためにこの法案を使用する恐れがあると主張する。
さらに、この危険な法案は徐々に拡大解釈され、軽微な犯罪にまで広がる傾向があることも指摘している。
たとえば、フランスでは遺伝子登録は当初は性犯罪者にのみ使用されていたが、現在ではほとんどの犯罪者に使用されているのが現状だ。
同団体は、スパイ規定が「安全の権利、私生活の権利、個人的な通信の権利」を妨げることになると主張しているのだ。
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監視社会への懸念と政府の見解 だが、フランスは間もなく、犯罪者を監視する広範な権限を有するようになるかもしれない。
そもそもフランスが監視権限を強化したのは、2015年に発生したテロ事件がきっかけだそうだ。
エリック・デュポン=モレッティ法務大臣は、そのような監視手法を導入する必要があるのは、年間わずか数十件のみであると述べ、このように話している。
私たちは、完全な監視下にある社会を描いたジョージ・オーウェルの小説『1984年』のような全体主義からは程遠い。References:France passes bill to allow police remotely activate phone camera, microphone, spy on people/ written by Scarlet / edited by parumo
だが、この新法律は命を救うことになるだろう。
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