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客の顔情報115店が無断共有!? 万引き防止システムの怖い落とし穴

TABLO / 2014年4月11日 16時0分

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 認証技術が進んだ現在、防犯対策に顔認証装置を設置する店舗は多数存在しており、大手ショッピングモールや大型アミューズメント施設、百貨店などを中心に増加傾向にある。いままでは防犯カメラから不審者の写真を取り出し、事務所に貼り出すなどして警戒するのが一般的であったが、いまや顔認証登録されている者が入店すると同時に発報し、不審者の顔写真が表示される時代なのだ。今回は、防犯システムの最先端といえる顔認証装置の運用実態と、そこに潜む問題点に迫る。

 つい先日、自宅近くのショッピングモールに行くたびに、万引きすると疑われて困っているという人物から相談を受けた。どうやら顔認証装置に不審者登録されているらしく、いつ行っても入店した直後から店員や保安員、警備員などの監視下に置かれ、車で行った場合には駐車場で張り込まれることまであるという。

 その店の名前を聞けば、確かに顔認証装置を導入している店なので、単なる被害妄想とは言い切れない。そこで、警戒されるようなことをした覚えはあるか聞いてみると、以前に捕捉された経験はなく、万引きしようと思ったことすらないと答えた。つまり、何も悪いことをした覚えはないのに不審者扱いされて、執拗な追跡を受けるほどに警戒されているというわけだ。

 無論、その店に行かなければ済む話ではあるが、自分にとって一番便利な場所にある店なので、それも悔しい。そこで、店の責任者に追尾を止めるよう苦情を申し入れ、顔認証に登録されているだろう情報の削除を求めてみた。しかし、応対した責任者は顔認証装置の設置はおろか、追尾していることすら認めなかった。こうした装置が設置できるような大規模商店ほど、防犯システムの設置や運用方法を明かさないので、自分が不審者として登録されているかどうかの確認すらできないのである。

 ここで気になるのは、その登録基準と情報管理の在り方だろう。顔認証装置に不審者登録される者は、少なくとも犯行現場が明確に映っている場合や、捕捉された既遂者に限られるべきだと考える。しかし、筆者の知る限りでいえば事業者側が登録判断をしており、その基準は極めて曖昧だ。現状においては、登録できる立場にある者が怪しく感じた人物や、どこか気に入らない人物を不審者として登録しているのである。

 それに、登録情報のクリーニングが行われることはなく、明確な削除基準を持たないことも大きな問題といえる。つまり、一度不審者のデータベースに登録されてしまえば、その情報に誤りがあったとしても削除される機会はないので、半永久的に不審者扱いされる破目に陥ってしまうのだ。誤った不審者登録は個人情報の侵害を生み、善良であるはずの市民や顧客の日常生活に支障を及ぼす。顔認証装置の販売業者や使用者などには、このような状況を放置することなく、早期に改善すべきだと忠告したい。

 また、情報の流失や目的外利用も、大いに懸念されるところだ。先般、首都圏および中京圏に存在するスーパーやコンビニスストアなど五十事業者、百十五店舗間において、万引き犯やクレーマーなどに区分けされた顔写真のデータベースが共有されていた事実が報道された。防犯目的で取得した個人情報の無許可共有や無断提供は、個人情報保護条例に抵触する違法行為といえるが、顔認証装置の販売会社は「万引きを防ぎたい店舗ニーズに応じているため問題はない」とコメントして居直っている状況にある。

 さらには、警察庁においても「可搬型顔画像検出照合装置」なる顔認証装置の導入が進められている。組織犯罪対策に使用するとしているが、顔画像の登録基準や設置場所、情報の適正利用に関する運用基準についての回答はしていない。こうなると商店と警察間におけるデータ共有も招きかねず、そうなればプライバシーのない監視社会が構築されてしまうだろう。そんな息苦しい世の中にならないことを願うばかりだ。

Written  by伊東ゆう

Photo by cjmartin

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